RHEL9.4におけるEUSリポジトリへの切り替え手順

RHEL(Red Hat Enterprise Linux)はエンタープライズ環境で広く利用されるOSですが、システムの安定性を維持するために、特定のバージョンを長期間使用したい場合があります。

 

そのために提供されているのが「Extended Update Support(EUS)」です。

 

今回の記事ででは、RHEL9.4を利用しているシステムをEUSに切り替える背景、メリット、および具体的な切り替え手順を解説します。

 

EUSリポジトリへ切り替えてみた

■リポジトリ切り替えが必要となる状況

RHELのEUSリポジトリは、特定バージョンの長期サポートを受けるための仕組みです。このリポジトリを利用することで、頻繁なアップデートを回避しつつ、重要なセキュリティ修正を適用することが可能です。

 

具体的なケースとして、

  • 業務システムの互換性維持:特定バージョンでしか動作しないミドルウェアの対応したい
  • セキュリティ強化:最新バージョンを追わずに脆弱性対応を迅速化したい

 

わたしは今、RHEL9.4を利用していて、RedHatから発表されている「Red Hat Enterprise Linux 8 および 9 のライフサイクル」のRHEL9の計画ガイドを見ると、EUSに切り替えることで2028年の初めまでサポートされるようですね。
 
RHEL9.4EUS切り替え2
Red Hat Enterprise Linux (RHEL) Extended Update Support (EUS) の概要より

 

バージョン9.4を固定し、複数年運用するため、EUSに切り替えて、9.4に限定されたセキュリティパッチや重要なバグ修正のみが提供される状況にしたいですね。

 

 

■EUSリポジトリ切り替えのメリットとデメリット

EUSに切り替えなくても、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) は通常のサポートとアップデートを受けることができます。
EUSへ切り替えるメリットやデメリットはあるのでしょうか。

 

●メリット

  • 安定性の確保:特定バージョンを維持しながら必要な修正を適用できる
  • 互換性の保持:特定アプリケーションや業務要件への対応が容易である
  • セキュリティ対応:頻繁なバージョン変更を避けつつ脆弱性に対応できる

●デメリット

  • 機能の制約:新機能の利用が遅れる可能性がある
  • 運用ミスのリスク:設定の不備により更新や修正が適用されない場合がある

 

 

■手順

EUSへ切り替える手順を、実際のコマンド結果と交えて紹介していきます。

 

●現在のリポジトリ状況を確認

以下のコマンドで現在のOSバージョンとリポジトリ構成を確認します。

【実行コマンド】

cat /etc/os-release
sudo dnf repolist

 

【実行結果】

[ec2-user@ip-10-0-1-108 ~]$ cat /etc/os-release 
NAME="Red Hat Enterprise Linux"
VERSION="9.4 (Plow)"
ID="rhel"
ID_LIKE="fedora"
VERSION_ID="9.4"
PLATFORM_ID="platform:el9"
PRETTY_NAME="Red Hat Enterprise Linux 9.4 (Plow)"
ANSI_COLOR="0;31"
LOGO="fedora-logo-icon"
CPE_NAME="cpe:/o:redhat:enterprise_linux:9::baseos"
HOME_URL="https://www.redhat.com/"
DOCUMENTATION_URL="https://access.redhat.com/documentation/en-us/red_hat_enterprise_linux/9"
BUG_REPORT_URL="https://bugzilla.redhat.com/"

REDHAT_BUGZILLA_PRODUCT="Red Hat Enterprise Linux 9"
REDHAT_BUGZILLA_PRODUCT_VERSION=9.4
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT="Red Hat Enterprise Linux"
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT_VERSION="9.4"

[ec2-user@ip-10-0-1-108 ~]$ sudo dnf repolist
Updating Subscription Management repositories.
Unable to read consumer identity

This system is not registered with an entitlement server. You can use "rhc" or "subscription-manager" to register.

repo id                                                                   repo name
rhel-9-appstream-rhui-rpms                                                Red Hat Enterprise Linux 9 for x86_64 - AppStream from RHUI (RPMs)
rhel-9-baseos-rhui-rpms                                                   Red Hat Enterprise Linux 9 for x86_64 - BaseOS from RHUI (RPMs)
rhui-client-config-server-9                                               Red Hat Enterprise Linux 9 Client Configuration

 

AWSが提供するRed Hat Update Infrastructure (RHUI)からパッチやアップデートを提供される設定になっていて、標準のアップデートストリームの設定ですね。

 

【表示されているリポジトリ】

  • rhel-9-appstream-rhui-rpms: RHEL 9 の AppStream リポジトリ。
  • rhel-9-baseos-rhui-rpms: RHEL 9 の BaseOS リポジトリ。
  • rhui-client-config-server-9: RHUI クライアント設定リポジトリ。

 

 

●RHUI-EUSスイッチツールの確認

RHELのRHUI環境では、rhui-eus-switchコマンドが用意されています。このコマンドを使用してEUS対応可能なバージョンを確認します。

【実行コマンド】

sudo rhui-eus-switch

 

【実行結果】

[ec2-user@ip-10-0-1-108 ~]$ sudo rhui-eus-switch
Checking if current version is eligible for EUS switch.
Your RHEL product version is eligible for switch to EUS.
Your current version is eligible for switch to EUS.
To switch to EUS, run this script with the version you want to switch to as a parameter.
Currently supported versions are: 9.0, 9.2, 9.4
Examples:
To switch to RHEL EUS 8.6, run: /bin/rhui-eus-switch 8.6
To reset back to main stream version, run: /bin/rhui-eus-switch reset

 

現在利用可能なサポートバージョンが表示されました。
Currently supported versions are: 9.0, 9.2, 9.4

 

 

●EUSリポジトリへの切り替え

対象のバージョンを指定してリポジトリを切り替えます。ここではRHEL9.4をEUSに切り替える例を示します。

【実行コマンド】

sudo rhui-eus-switch 9.4

 

【実行結果】

[ec2-user@ip-10-0-1-108 ~]$ sudo rhui-eus-switch 9.4
Your RHEL product version is eligible for switch to EUS.
Switching to EUS version 9.4
[INFO:choose_repo] choose_repo:33 2024-12-13 01:11:04,663: Enabling binary repos in redhat-rhui-eus.repo
Updating Subscription Management repositories.
Unable to read consumer identity

This system is not registered with an entitlement server. You can use "rhc" or "subscription-manager" to register.

25 files removed

 

スイッチできたようです。サブスクリプションに関するメッセージがありますが、登録は不要ですので無視してください。

 

 

●リポジトリ切り替え後の確認

切り替えが成功したことを確認します。
【実行コマンド】

sudo dnf repolist

 

【実行結果】

[ec2-user@ip-10-0-1-108 ~]$ sudo dnf repolist
Updating Subscription Management repositories.
Unable to read consumer identity

This system is not registered with an entitlement server. You can use "rhc" or "subscription-manager" to register.

repo id                                                             repo name
rhel-9-appstream-eus-rhui-rpms                                      Red Hat Enterprise Linux 9 - AppStream - Extended Update Support from RHUI (RPMs)
rhel-9-baseos-eus-rhui-rpms                                         Red Hat Enterprise Linux 9 - BaseOS - Extended Update Support from RHUI (RPMs)
rhui-client-config-server-9                                         Red Hat Enterprise Linux 9 Client Configuration

上記のコマンド結果より、rhel-9-appstream-eus-rhui-rpmsrhel-9-baseos-eus-rhui-rpms がリポジトリに追加されていることが確認できます。

【有効化されているリポジトリ】

  • rhel-9-appstream-eus-rhui-rpms: RHEL 9 の AppStream リポジトリ(EUS対応)。
  • rhel-9-baseos-eus-rhui-rpms: RHEL 9 の BaseOS リポジトリ(EUS対応)。

 

手順は以上です。

 

 

■切り替えが一般的な運用か判断する基準

今回わたしがEUSへの切り替えが必要だった理由は、特定のバージョンを長期利用する要件があったためです。
どういった基準で、EUSに切り替えるかというと、

  • 一般的な場合
    • 長期間特定のバージョンを使用する必要がある
    • システムの安定性を重視し、頻繁なアップデートを避けたい
  • 特殊な場合
    • テスト環境や開発環境でのみ使用する
    • アプリケーションやミドルウェアの要件が特異である

 

 

■注意点

EUSへの切り替えは、どのシステムでも実施すればいいというものではありません。

 

  • バージョン固定のメリットとリスク
    • バージョン固定は互換性を保証しますが、最新の機能やパッチを即座に適用できない場合があります。
  • リポジトリ構成の見直し
    • 運用変更やシステム更新時には、EUS利用が最適か再評価する必要があります。

 

 

まとめ

RHEL9.4をEUSリポジトリに切り替えることで、長期的な安定性とセキュリティ対応を実現できます。

 

この手法は、頻繁なアップデートが業務に与える影響を最小限に抑えたい場合や、特定バージョンでの動作保証が求められるシステムで特に有用です。

 

リポジトリ切り替えは計画的に行い、必要に応じて設定を見直すことで、より効率的な運用を目指しましょう。

 

 

参考リンク:Red Hat Enterprise Linux ライフサイクルRed Hat Enterprise Linux (RHEL) Extended Update Support (EUS) の概要Cannot subscribe to the EUS repository on AWS EC2 PAYG instances

 

 

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Last modified: 2024-12-14

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