こんにちは、松山です。
re:Invent 2025が閉幕しました。
Keynoteが未来の方向性を示す羅針盤だとするならば、Gamified Learning(ゲーム化された学習)セッションは、その技術をどう実装するかを試す「戦場」と言えるでしょう。
今回は、私が Mandalay Bay で参加した注目セッション、NVIDIAスポンサーによる 「AWS Jam: Generative AI (GHJ301)」 の体験をシェアします。
5Kランから始まった、密度の濃い一日
この日は一日中 Mandalay Bay に缶詰状態でした。早朝は恒例の「5K Race」で汗を流し、午前中は 「AWS GameDay: AI-Assisted Developer Experience (GHJ306)」 に参加。
体力と脳力のウォーミングアップ(?)を十分に済ませた後、午後2時、いよいよ本番となる3時間の長丁場、AWS Jamの会場であるMandalay Bay Ballroom Fへと足を踏み入れました。
セッション概要
- Session ID: GHJ301
- タイトル: AWS Jam: Generative AI – Sponsored by Nvidia
- レベル: Level 300 – Advanced
- トピック: Generative AI, Agentic AI, Amazon Bedrock, SageMaker AI
- 形式: チーム対抗実践型ハンズオン (Gamified learning)
このJamのテーマは 「Unlock the power of Generative AI(生成AIの力を解き放つ)」。
単にデータを持っているだけでは不十分です。Amazon BedrockやSageMaker AIといったAWSサービスを駆使し、リアルなシナリオにおける生成AIやエージェントAIの課題を解決する力が試されます。
国境を超えたチームと「ゴールドジャケット」の男
Jamの醍醐味の一つは、その場の出会いです。
席に着くと、私を含め国籍の全く異なる4人の即席チームが結成されました。自己紹介を済ませると、すぐに「戦友」としての絆が芽生えます。
特筆すべきは、ひときわ目立つ金色のジャケットを着たフランス人のチームメイトです。

彼がただ派手なだけではないことは、LinkedInで繋がってすぐに判明しました。
なんと彼は 328個もの技術認定資格 を保有しているのです!その圧倒的な学習意欲と技術への情熱には、ただただ脱帽するばかりでした。
実践課題:医療ガイドライン同期パイプラインを修復せよ
出題された課題は非常に実践的(Hardcore)なものでした。印象に残っているタスクを一つ紹介します。
タスク:Intelligent Content Transformation Pipeline
【シナリオ背景】
医療機関「MedBridge」にて、心臓病に関する用語ガイドラインの更新が遅延し、古い情報に基づいたレポートが患者に送られてしまうというトラブルが発生。
経営陣は激怒しており、「医療チームが新しいドキュメントをアップロードしたら、即座にシステムへ同期されるよう自動化しろ!」との厳命が下りました。
【ミッション】
S3へのアップロードからBedrockナレッジベース(Knowledge Base)への同期までを、完全自動化するイベント駆動アーキテクチャを構築する。
【解決へのアプローチ】
- S3 Event Notifications: バケット設定を変更し、オブジェクト作成(Object Created)イベントをトリガーとして通知を発火させる。
- AWS Lambda: デプロイ済みだがバグを含んでいるLambda関数(
medical-sync-function-jam)を修正し、S3トリガーと接続する。 - 環境変数の設定: Lambdaの環境変数に、正しい Knowledge Base ID と Data Source ID を設定する。
- Amazon Bedrockでの検証:
audio-formatting-guidelines.txtをアップロードし、手動介入なしにナレッジベースが更新(Ingestion)されるかを確認。
Lambdaのコードロジック修正や、S3からBedrockへの連携パイプラインを構築することで、「Self-healing(自己修復的)」な自動化システムを完成させました。
戦績と振り返り
おすすめ度:⭐⭐⭐⭐⭐ (5/5)
3時間にわたる激闘の末、我らが多国籍チームはリーダーボードで 19位 という結果を残しました。トップには届きませんでしたが、即席チームでの連携や課題の難易度を考えれば、十分に満足できる結果です。
良かった点:
- 手厚いサポート: 会場にはAWSのエキスパートが常駐しており、未知のエラーに直面してもすぐに質問でき、的確なアドバイスをもらえました。
- 最高の雰囲気: 競技としての緊張感と、課題をクリアした時の達成感が共存していました。
- 高い学習効果: 座学のセッションとは異なり、実際に手を動かしてBedrockやSageMakerを触るため、生成AIスキルの定着率が段違いです。
NVIDIAからの記念品:コードが刻まれたマグカップ
スポンサーのNVIDIAから参加賞として黒いマグカップが贈られました。

ただのロゴ入りカップではありません。
プリントされているのは、エンジニアなら思わずニヤリとしてしまう CUDA C++のコード です。

せっかくなので、このコードの「ネタ」を解説します。
#include "buy.h"
#include "save.h"
GPU* gpus = nullptr;
unsigned numGpus = 0;
unsigned long* savings = getCurrentSavings();
__global__ void saveMore(GPU* gpus, int numGpus, unsigned long* savings) {
int idx = blockIdx.x * blockDim.x + threadIdx.x; // CUDAの典型的なスレッドインデックス計算
if (idx < numGpus) {
increaseSavings(gpus[idx], savings); // GPUを使って「貯蓄」を増やす
}
}
int main(int argc, char** argv) {
for (;;) { // 無限ループ
buyMore(&gpus, &numGpus); // GPUをもっと買う
saveMore<<<(numGpus + 255) / 256, 256>>>( // カーネル起動
gpus, numGpus, savings);
}
}
コードのポイント:
- 無限ループ (
for(;;)): 永遠に処理が続くことを意味します。 buyMoreとsaveMore: これはNVIDIAのCEO、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏の名言 「The more you buy, the more you save(買えば買うほど、お得になる)」 をコードで表現したジョークです。- カーネル起動:
<<<...>>>というCUDA特有の構文で、GPUの数に応じてスレッドブロックを動的に計算しているあたりが非常に芸が細かいです。
「GPUを買えば買うほど(処理性能が上がって時間とコストが浮くので)貯金が増える」というNVIDIA流の哲学が込められた、エンジニア心をくすぐる素晴らしいノベルティでした。
まとめ
AWS Jamは、re:Invent 2025の中でも特に価値のあるセッションの一つでした。
最新技術を学ぶだけでなく、世界中の開発者と協力して課題に挑む経験は、何物にも代えがたいものです。
もし来年参加される方がいれば、ぜひスケジュールに「Jam」を組み込むことを強くおすすめします!


