こんにちは!松山です。
ラスベガスで開催中の AWS re:Invent 2025 の会場からお届けしています。
先ほど、AWS CEO就任後初となる Matt Garman 氏の基調講演(Keynote)が終了しました。約2時間の講演を一言で表すなら、「実用性(Practicality)」へのシフトです。
Garman CEOは「Why Not?」という問いかけと共に、クラウドとAIが新たなフェーズに入ったことを宣言しました。それは、単なるチャットボットではなく、複雑なタスクを自律的にこなす「エージェントの時代(The Agentic Era)」です。
コードを書くAI、数日間動き続けるLambda、そしてNVIDIAとの驚きの連携まで。現地で発表されたばかりの重要アップデートを、日本のエンジニア・開発者の皆様に向けて速報としてまとめます。
1. Agentic AI:AIは「アシスタント」から「社員」へ
今回の最大のハイライトは、AIエージェント(Agents)への注力です。AWSは、長期記憶を持ち、自律的に判断して行動する「Frontier Agents」を発表しました。
- AWS Kiro (Preview):あなたの「バーチャル・リードエンジニア」
単なるコード補完ツールではありません。Kiroはリポジトリ全体の文脈を理解し、バグの修正、新機能の追加を行い、さらには人間に向けてプルリクエスト(PR)を作成します。開発者の良きパートナーとなる存在です。 - AWS DevOps Agent & Security Agent
運用の自動化とセキュリティ強化のための専門エージェントです。システムの障害検知から復旧計画の作成、あるいは脆弱性の能動的なテストまでを自律的に行います。 - Amazon Nova Act
AIに「手」を与える機能です。ブラウザ上でのクリック、スクロール、入力といった操作をAIエージェントが人間のように実行し、Webベースの複雑なワークフローを完遂させます。
2. 基盤モデル:Amazon Nova 2 ファミリー登場
自社開発モデルにおいても、AWSは攻めの姿勢を見せました。コストパフォーマンスと速度を追求した Amazon Nova 2 シリーズの発表です。
- Nova 2 Lite / Pro / Omni / Sonic
軽量モデルから、動画も扱えるマルチモーダル(Omni)、そして特筆すべきは音声対話に特化した Sonic です。遅延を感じさせない超低レイテンシーな応答速度を実現しています。 - Amazon Nova Forge(注目!)
企業が自社の独自データを活用し、Novaモデルを「蒸留(Distill)」およびファインチューニングできる新サービスです。Sony(ソニー)の事例も紹介され、クリエイティブな現場で「企業ごとの色」を出せるモデル構築が可能になります。
3. インフラ & 半導体:NVIDIAとの壁を超えた連携
計算資源(コンピュート)分野では、自社チップの進化に加え、驚きの発表がありました。
- AWS Trainium3 (Trn3) 正式発表
前世代比で4倍のパフォーマンス、40%の電力効率向上を実現したAI学習用チップです。 - Trainium4 & NVIDIA NVLink サポート(衝撃!)
次世代チップ「Trainium4」のプレビューと共に、NVIDIA NVLinkのサポートが発表されました。これにより、AWSの自社シリコンとNVIDIAのGPUを同じ環境でシームレスに接続・混在させることが可能になります。 - Project Rainier
Anthropic社と協力し、世界最大級のAI計算クラスターを構築中であることも明かされました。現在50万個のTrainiumチップが稼働しており、来年末までには100万個規模に拡大予定です。
4. 開発者・運用者への福音:Serverlessとコスト
日本の開発者コミュニティでも話題になりそうな、待望の機能アップデートもありました。
- AWS Lambda Durable Functions
サーバーレスの歴史が変わる機能です。Lambda関数の実行を「一時停止(Pause)」し、任意のタイミングで「再開(Resume)」できるようになりました。
例えば、承認ワークフローなどで数日間待機が発生する場合、停止中は課金されません。ステート管理が劇的に楽になります。 - Database Savings Plans
EC2でおなじみのSavings Plansが、ついにデータベース(RDS, Aurora, DynamoDBなど)にも対応しました。1年または3年の利用コミットにより、最大35%のコスト削減が可能になります。これは円安下の日本企業にとって非常に嬉しいニュースです。
現地からの所感
会場の熱気から感じたのは、AWSが生成AIを「お試し」のフェーズから、「本番環境でガッツリ使う」フェーズへと明確に引き上げたということです。
「Why Not?」というキーワードは、これまでの技術的な制約や常識に対して「なぜやらないのか?(やればいいじゃないか)」と挑戦する姿勢を示しています。
チップセットからモデル、そしてエージェントまで。フルスタックでAI環境を整えたAWSの本気度を感じるKeynoteでした。
明日以降も、Las Vegasから最新情報をお届けします!

