こんにちは、石川です。
今回は後編として、AWS re:Invent 2025のInnovation Talksを見ていて印象に残った、AI時代を支える基盤・データ・運用まわりの話を、自分なりに整理してみます。
はじめに
re:Invent 2025では、AIそのものの話だけでなく、それを支えるCompute、ネットワーク、ストレージ、分析、運用、セキュリティの進化もかなり前に出ていました。
前編では、AIエージェントや開発、業務変革といった“表側”の変化を中心に見てきました。
一方で、それらを本番で動かすには、裏側の基盤がしっかりしていないと成り立ちません。
そこで後編では、次の5つに絞ってまとめます。
- Compute
- ネットワークと接続設計
- ストレージと分析基盤
- データ整備とデータベース
- 運用とセキュリティ
1. AI時代でも、まず大事なのはCompute
AIの話になると、どうしてもモデルやアプリケーションに目が向きがちです。
ただ、実際にはその裏で動く計算基盤がなければ、何も始まりません。
re:Invent 2025では、Compute分野でも大きな発表があり、Amazon EC2 Trn3 UltraServers や AWS Graviton5 などが紹介されていました。
つまりAWSは、AIアプリケーションそのものだけでなく、「AIを動かす土台」もかなり強化しているということです。
どれだけAIが賢くても、動かす基盤が弱ければ、速くも安くも安定しても動きません。
派手さはなくても、まずは計算基盤がしっかりしていることが前提なのだとあらためて感じました。
2. ネットワークは“裏方”ではなく、設計の中心に近づいている
以前は、ネットワークというと「つながればよいもの」として見られがちだったように思います。
ただ、AIや配信、大規模処理が当たり前になってきた今は、どのようにつなぐかそのものが性能に直結します。
Networking関連では、Amazon CloudFront、Amazon VPC、AWS Cloud WAN、Elastic Load Balancing に加えて、ハイブリッド接続やグローバル接続に関する話も強く打ち出されていました。
また、現実のシステムはAWSだけで完結するとは限りません。
社内環境と接続したり、複数拠点をまたいで構成したり、段階的にクラウドへ移行したりするケースも多くあります。
その意味で、AWS Direct Connect、AWS Site-to-Site VPN、AWS Transit Gateway、AWS Outposts、AWS Local Zones のようなサービスも、引き続き重要な位置づけにあると感じました。
「全部を一気にクラウドへ移す」ことだけが正解ではなく、今ある環境とうまくつなぎながら前に進めることも大切です。
新しい技術の話が増えるほど、こうした地に足のついた接続設計の重要性はむしろ増しているように思いました。
3. ストレージと分析基盤は、AIが使う前提で進化し始めている
ストレージというと、これまでは「ファイルを置く場所」「バックアップを保管する場所」という印象が強かったかもしれません。
ただ、re:Invent 2025では、ストレージがAIや分析のためのデータ基盤として進化しているのがかなり印象的でした。
特に目立っていたのが Amazon S3 まわりです。
S3 Tables や S3 Vectors が、Agentic AI 向けのデータ基盤として紹介されていたのは興味深いポイントでした。
また、分析基盤も従来のように「人がBIツールで見るための場所」というだけではなくなってきています。
Amazon Redshift、Amazon Athena、AWS Glue、Amazon EMR、Amazon SageMaker Unified Studio などが、分析とAIをつなぐ基盤として紹介されていたのも印象に残りました。
S3上のIcebergテーブルを複数の分析サービスから扱う方向性も含めて、これからの基盤は「人が見るため」だけでなく、「AIも使う前提」で整えられていくのだと思います。
4. AI時代でも、結局ボトルネックになるのはデータ整理
AIの話になると、どうしてもモデルの性能や推論精度に注目が集まりがちです。
ただ、実際の現場では、データが探しにくい、意味が分からない、整っていない、といった問題のほうが先に壁になることが多いはずです。
その意味で、Amazon SageMaker Catalog、AWS Glue、AWS Lake Formation、Amazon SageMaker Unified Studio のように、データを整理し、見つけやすくし、管理しやすくする仕組みは非常に重要だと感じました。
また、データベースもこれまでのように「アプリケーションの裏側にある保存先」というだけではなくなりつつあります。
AIエージェントがそこから情報を読み取ったり、必要に応じて更新したりする流れも少しずつ現実味を帯びてきています。
たとえば Amazon Bedrock Agents と Amazon Aurora PostgreSQL を Amazon RDS Data API でつなぐ例や、Aurora をエージェントの長期記憶として使う考え方も紹介されていました。
AIを活用できるかどうかは、モデルの賢さ以前に、データをどれだけ扱いやすい状態にできているかに左右される。
この点は、今後もあまり変わらないのではないかと思います。
5. AI時代ほど、運用とセキュリティの重みは増していく
AIや新しいサービスが増えると、便利になる一方で、全体の構成はどうしても複雑になります。
何がどこで動いていて、どこに問題があり、どこを見ればよいのかが分かりにくくなるからです。
そのため、re:Invent 2025では Amazon CloudWatch を中心に、運用や可観測性の強化がかなり目立っていました。
ログの統合や分析強化といった方向性も、今後ますます重要になっていきそうです。
AIが増えるほど、監視や運用の重要性は下がるどころか、むしろ高まる。
そう考えると、AIを活用するエンジニアだけでなく、保守・運用を担うエンジニアの役割も新しい段階に入ってきているのだと思います。
そして、どれだけ新しいことが増えても、最後まで土台であり続けるのはセキュリティです。
AIが業務に深く入り込むほど、扱うデータの重要性も、アクセス制御の重みも、説明責任の難しさも増していきます。
新しい技術に目が向くほど、基本の大切さを忘れやすくなります。
それでも、本番で使う以上、セキュリティは最後に確認する項目ではなく、最初から前提として組み込んでおくべきものだとあらためて感じました。
おわりに
後編を通してあらためて感じたのは、AI時代の主役はモデルだけではないということです。
実際には、それを支えるCompute、ネットワーク、ストレージ、分析基盤、データ整備、運用、セキュリティがそろって初めて、本番で使える形になります。
前編では、AIエージェントや開発、業務変革といった変化を中心に見てきました。
一方、後編では、その裏側でAWSがかなり広い範囲の土台を強化していることが見えてきました。
派手なAIの話だけを追っていると見落としがちですが、実際にはこうした基盤部分こそ重要です。
その意味で、re:Invent 2025は「AIの進化」だけでなく、「AIを支えるクラウド全体の進化」を感じる内容だったように思います。
正直なところ、こうした最先端の話は、実務でまだすべてを触れているわけではないので、完全に解像度高くイメージできているわけではありません。
それでも、今後はこうした領域に少しずつ関わりながら、最先端のAIを支える側にも回れるようなキャリアを歩んでいきたいと思いました。

