どうも、クラ本部の黒田です。
大変ご無沙汰しております。
あっという間に、旅にピッタリな季節になってきましたね。
今日はオブザーバビリティ市場のNew Relic と Datadog について、アウトプットしていきます。
はじめに
オブザーバビリティ(Observability)とは
オブザーバビリティとは、システムの内部状態を外部から理解・分析できる能力のことです。ITやソフトウェア開発の文脈では、以下の要素が含まれます:
- モニタリング:システムの動作やパフォーマンスを継続的に監視
- ロギング:システムの動作履歴や重要なイベントを記録
- トレーシング:リクエストがシステム内をどのように通過するかを追跡
- メトリクス:システムのパフォーマンスや健全性を数値化して測定
オブザーバビリティの目的は、システムの問題をより迅速に特定し、デバッグを容易にし、全体的なパフォーマンスと信頼性を向上させることです。
市場リーダー:New RelicとDatadog
オブザーバビリティ市場では、New RelicとDatadogが主要プレイヤーとして知られています。両社ともに包括的なソリューションを提供していますが、それぞれに独自の強みがあります。
New Relic vs Datadog:詳細比較
1. 市場ポジション
項目 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
設立 | 2008年 | 2010年 |
主要顧客層 | 中小企業〜大企業 | 中小企業〜大企業 |
市場シェア | 約34-39%(2023年推定) | 約17-20%(2023年推定) |
市場調査レポート「2023年版 サービスマネジメント市場のマーケティング分析」内のソフトウェア市場トレンド調査にて、オブザーバビリティ市場の総合メーカーシェア(ソフトウェア+SaaS)で34%の首位、SaaSメーカーシェアでも39%で同様に首位に位置づけられました。New Relicが首位を獲得したのは、オブザーバビリティ市場の調査開始以来、5年連続5回目となります。
New Relicは長い歴史を持ち、特にアプリケーションパフォーマンスモニタリング(APM)分野で強い presence を持っています。一方、Datadogは急速に成長し、特に最近数年で市場シェアを拡大しています。
2. 主要機能比較
機能 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
APM | ✓✓✓ | ✓✓ |
インフラモニタリング | ✓✓ | ✓✓✓ |
ログ管理 | ✓✓ | ✓✓✓ |
分散トレーシング | ✓✓✓ | ✓✓ |
リアルユーザーモニタリング | ✓✓ | ✓✓✓ |
セキュリティモニタリング | ✓ | ✓✓✓ |
(✓の数は相対的な強さを示しています)
特徴 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
市場ポジション | 歴史が長く、安定した顧客基盤 | より大きな市場シェア、急速に成長中 |
APM | 詳細なトランザクション追跡 コードレベルの洞察 多言語サポート |
幅広いテクノロジースタックカバー 強力な分散トレーシング マイクロサービス向け設計 |
インフラモニタリング | 包括的なサーバー/コンテナ監視 カスタムメトリクス作成が容易 |
広範囲なコンポーネントサポート 強力なネットワーク監視 優れた自動検出 |
UI/UX | 最近改善されたUI カスタマイズ可能なダッシュボード |
直感的で使いやすいインターフェース 簡単なドラッグ&ドロップ機能 |
AI/ML活用 | AIOps機能 プロアクティブな問題検出 |
高度な異常検知 強力な予測・トレンド分析 |
統合/拡張性 | 豊富なAPI/SDK オープンソースへの高い貢献 |
400+の統合済みサービス 容易なカスタム統合作成 |
価格モデル | ユーザー+使用量ベース混合 小規模チーム向け無料プラン有 |
主に使用量ベース 機能別選択可能 |
主な強み | 開発者向けの深い洞察 アプリケーション性能分析 |
幅広いITオペレーション監視 使いやすさとインテグレーション |
3. アプリケーション開発とインフラストラクチャの観点
New Relic
アプリケーション開発の強み:
- 詳細なコードレベル診断
- 開発者中心のツール(IDE統合など)
- 高度な分散トレーシング機能
インフラストラクチャの強み:
- 包括的なサーバーモニタリング
- コンテナとKubernetes監視
- クラウドネイティブ環境のサポート
Datadog
アプリケーション開発の強み:
- 統合されたモニタリングプラットフォーム
- リアルタイムアプリケーションセキュリティモニタリング
- ユーザーエクスペリエンス監視
インフラストラクチャの強み:
- 幅広いインテグレーション(400以上)
- 高度なネットワーク性能モニタリング
- インフラストラクチャ自動検出
観点 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
アプリケーション開発 | ||
主な強み | コードレベルの詳細診断 | 統合モニタリングプラットフォーム |
特徴的機能 | • 詳細なスタックトレース • IDE統合 • エラートラッキング |
• APM、ログ、メトリクスの統合ビュー • リアルタイムセキュリティモニタリング • ユーザーエクスペリエンス監視 |
最適な用途 | パフォーマンス最適化 バグ修正 |
全体的なアプリケーション健全性監視 セキュリティとパフォーマンスの統合分析 |
インフラストラクチャ | ||
主な強み | 詳細なサーバー/コンテナ監視 | 幅広いインテグレーションと自動検出 |
特徴的機能 | • Kubernetes詳細モニタリング • クラウドネイティブ環境サポート • サーバーレス関数の最適化 |
• 400+のテクノロジー統合 • 高度なネットワーク性能モニタリング • インフラストラクチャの自動検出 |
最適な用途 | クラウドネイティブアプリケーションの監視 マイクロサービスアーキテクチャの可視化 |
大規模で複雑なITインフラの監視 マルチクラウド/ハイブリッド環境の管理 |
総合評価 | アプリケーション開発者向けの 深い洞察と診断に最適 |
幅広いITインフラストラクチャの 統合監視に最適 |
4. AWS環境でのオブザーバビリティ実装
観点 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
AWS統合 | AWS統合エージェント、CloudWatch連携、X-Ray統合 | 包括的なAWS統合、CloudWatch完全サポート、Lambda Layersサポート |
セットアップ | AWS Cloudformationテンプレート提供 | Terraform模範、AWS Control Tower統合 |
メトリクス収集 | カスタムメトリクス作成が容易、EC2詳細メトリクス | 広範囲なAWSサービスメトリクス収集 |
ログ管理 | CloudWatch Logsとの統合、ログパターン検出 | リアルタイムログ処理、ログベースのメトリクス生成 |
コスト最適化 | AWS使用量と性能の相関分析 | 詳細なAWSコスト分析、使用量ベースの最適化提案 |
公式ドキュメントの比較
New Relic
New Relicの公式ドキュメントは、以下の特徴があります:
- 詳細なAPIリファレンス
- 豊富なチュートリアルとガイド
- 開発者向けの深い技術情報
特に注目すべき点として、New Relicはテルメトリーデータプラットフォームを提供しており、これによりユーザーは柔軟にデータを収集、分析、可視化できます。
Datadog
Datadogの公式ドキュメントは、以下の特徴があります:
- 直感的なナビゲーション
- 豊富な統合ガイド
- 多言語対応
Datadogの特徴的な機能として、Watchdogがあります。これは機械学習を活用した異常検知システムで、自動的にパフォーマンス問題を特定します。
価格設定とサポート体制の比較表
New RelicとDatadogの価格設定とサポート体制を以下の表で比較します。
価格設定比較
項目 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
基本料金構造 | ユーザーベース + データ量 | 機能ごとの料金 + ホスト数 |
最小料金 | $99/月(フルプラットフォームユーザー1名) | 約$15/月(1ホスト、Infrastructureのみ) |
データ料金 | $0.25/GB(最初の100GB無料) | 機能により異なる(例:ログ$0.10/GB取り込み) |
無料プラン | 1ユーザー、100GB/月まで | 5ホストまで、基本機能のみ |
エンタープライズ向け | カスタム価格あり | カスタム価格あり |
柔軟性 | データ使用量に基づく調整可能 | 機能ごとに選択可能 |
サポート体制比較
項目 | New Relic | Datadog |
---|---|---|
基本サポート | 全プランに含まれる | 全プランに含まれる |
オンラインリソース | 包括的なドキュメント、ナレッジベース | 多言語対応ドキュメント、ウェビナー、チュートリアル |
コミュニティサポート | アクティブなユーザーフォーラム | ユーザーフォーラム、Slack コミュニティ |
標準サポート応答時間 | 営業時間内 | 営業時間内 |
プレミアムサポート | 24/7電話サポート 1時間以内の初期応答(重大度1) |
24/7電話・チャットサポート 15分以内の初期応答(重大度1) |
エンタープライズサポート | 専任テクニカルアカウントマネージャー | 専任テクニカルアカウントマネージャー |
カスタムトレーニング | 利用可能(エンタープライズプラン) | 利用可能(エンタープライズプラン) |
サポート言語 | 主に英語 | 多言語対応 |
比較のポイント
-
価格構造:
- New Relicは主にユーザー数とデータ量に基づく料金体系で、シンプルさが特徴です。
- Datadogは機能ごとの詳細な料金設定を採用しており、必要な機能のみを選択できる柔軟性があります。
-
無料プラン:
- 両社とも無料プランを提供していますが、New Relicの方がデータ量制限が緩く、Datadogはホスト数制限があります。
-
エンタープライズ向け:
- 両社とも大規模導入向けのカスタム価格設定を提供しています。
-
サポートレベル:
- 基本的なサポート内容は似ていますが、Datadogの方がより迅速な応答時間を提供しています。
- Datadogは多言語対応のサポートを強みとしています。
-
オンラインリソース:
- 両社とも充実したオンラインリソースを提供していますが、Datadogはより多様な形式(ウェビナー、ビデオなど)のコンテンツを提供しています。
-
カスタマイズ:
- 両社ともエンタープライズ顧客向けにカスタマイズされたサポートとトレーニングオプションを提供しています。
この比較表から、New RelicとDatadogは価格設定とサポート体制において異なるアプローチを取っていることがわかります。New Relicはシンプルさを重視し、Datadogは柔軟性と多様性を強みとしています。組織の具体的なニーズ、予算、必要なサポートレベルに応じて、最適なツールを選択することが重要です。
選択のガイドライン
- アプリケーション中心のモニタリングが必要な場合、New Relicが適している可能性が高いです。
- 幅広いインフラストラクチャの可視性と統合が重要な場合、Datadogが好ましい選択肢かもしれません。
- 両方の側面が同等に重要な場合、両ツールの併用や、組織の主要な課題に最も適したツールの選択を検討することができます。
結論
New RelicとDatadogは共に優れたオブザーバビリティツールですが、それぞれに異なる強みがあります。New Relicはアプリケーション開発者向けの深い洞察と診断に特に優れており、Datadogは幅広いITインフラストラクチャの統合監視に強みがあります。
最終的な選択は、組織の具体的なニーズ、既存のインフラストラクチャ、開発プラクティス、そして将来の成長計画を考慮して行うべきです。また、両ツールとも無料トライアル期間を提供しているので、実際に使用してみて判断することをお勧めします。
オブザーバビリティの実装は、単なるツールの選択以上に、組織全体のアプローチとして捉えることが重要です。選択したツールを最大限に活用し、継続的な改善とイノベーションを促進することで、真の意味でのオブザーバビリティを実現できるでしょう。
では、また!